「寮長の武中です。よろしく」
「斉藤です。今日からよろしくお願いします」
型どおりの挨拶が終わると
「部屋に案内するわ。歓迎会はみんながそろってからするから そこでみんなに紹介するけど時間があったら部屋を回っている人には挨拶しておいて」生まれて初めて個室というものに入る僕はちょっとばかり楽しみにしていました。と食堂をでて案内された部屋はなんと入口の右側にある「喫茶室」と書かれた部屋の前に。
「ここ」
「喫茶室って?」
「まあ いろいろあるけどあんまり意味ないから気にしないで。とにかく今日からこの部屋使って。角部屋だから明るいと思うよ」
ドアを開けると下足のスペースが。靴が5~6足おけるスペース。たぶん寮になる前は調理をするスペースだったんだろうなと思われるタイル張りの洗面台と一口のガスコンロが1台おけるスペース。部屋は4畳半に押しいれがあって机までおいてる。木枠の大きさよりガラスが小ぶりな部分があり外の新鮮な空気が窓を開けなくてもはいってくる。窓を開ける時はかなり力がいるし、窓枠全体が少しひし形になる。畳と土間の高さは20センチもない。なんとなく地面の上に畳をおいている感じがする。壁は土壁に白いしっくいが塗ってある部屋の空気は若干湿り気が・・・・・
小一時間で荷物の整理は終了。ほっとしたところにドアを叩く音が。
「どうぞ」
勢いよくドアが開けられます。
「よぉ おれ 藤本 2階にいるからよろしく」
「斉藤です。よろしくお願いします」
「今週いっぱいでいいから今から言うもの揃えておいて」とメモをわたされます。
コーヒーカップ適当(最低2個以上) インスタントコーヒー(大) 砂糖 粉ミルク
「なんですか?これ?」
「この部屋 みんなの憩いの場だから。」
「えっ?」
「もうずっと決まってるから。この部屋には新入生が必ずはいって先輩がここでコーヒーを飲む。コニミケーションができる。仲間になれる。まあ 早く言えば親心だな。東京に初めて出てきて暮らすための知恵が身につく。バイト情報も交換できるし、彼女も紹介されるかもしれない。ひとりでいるよりみんなと楽しくやった方がいいだろ。コーヒー代は時々カンパしてやるから」
「はぁ」思わずため息が・・
二方向に窓があるこの部屋は隙間風が当然のことながらよく通る構造になっているらしく夜になって部屋の中で吐く息が白くなるという中で布団を頭までかぶった僕は明日からの東京ではなく寮での生活に不安を覚えながら眠りにつきました。 朝食へ